数年後、再びこの絵を見にアレッツオに足を運んだ時は、大規模な修復作業の真っ最中で、それでも足場に登り、文字通り鼻先20 センチで、筆の跡までも見る眼福を授かった。そして修復も終わった今、キレイに生まれ変わったピエロの絵に再会!と思ったら、なんと事前に入場時間を 予約しないと入れなくなっててびっくり!慌てて申し仕込み、最後の組に滑り込む。

資料を読むと何と15年前から修復作業の計画が持ち上がっており、ということは、私が初めて目にした時も、密かにソレらは進行されていたんだ!! そして今年から一般公開になったようだ。おぉ〜!

修復前と何がどうキレイになったか?なんて専門的な事はわからないけど、思い出の絵というのは、いつ見ても美しい!とため息をもらす私…。そして、 街の誇りである絵を、長い長い年月をかけ修復し、生き返らせていくイタリアという国の文化に、またまた大きなため息をもらすのでありました。



ウフィッツイ美術館にもP・デッラ・フランチェスカの傑作がある。それがこの「ウルビーノ公夫妻の肖像」ウフィッツイの中でも 目を引く絵のひとつだから、見たことのある人は多いんじゃないかな?

この絵に興味を持ったら、次はアレッツオまで足を運びに来てください(笑)

※2001年発行新潮社

「芸術新潮8月号〜イタリアの歓び」
に珍しく?アレッツオ及びピエロ・デッラ・フランチェスカの大々的な特集が載っています

「お帰り!ピエロ!」という文字に街の人の喜びが見てとれる
なんかイイよね〜あったかいキモチになる!
観覧予約は教会横の事務室で
15名〜20分くらい…と入れる人数と時間に制限あり
1人 L10,000

 

10年ほど前、フィレンツェに2週間ほどステイしながら近郊の街々を訪ね歩いたことがある。ルッカ、プラート、ピサ、ヴィンチ…。 どの街も趣深く、何を見ても楽しかったのだが、連日フルコースを供しているようで、いささか食傷気味だったのが絵画である。ドドーンと重く重厚な中世絵 画は、見る者に与える感動と一緒くらいのエネルギーを吸い取ってしまうようで、私はフラフラになっていた(笑)その中で訪れたアレッツオで、このピエロ ・デッラ・フランチェスカの画に出会ったのである。

アレッツオのちょうど中心に位置するサン・フランチェスコ教会は、外観も内部も驚くほど簡素でシンプルだ。その後陣を飾るのが、彼が手がけた代表作 「聖十字架伝説」である。フレスコの鮮やかな色彩と、個性的な人物像は、胃弱で疲れ切っていた私に爽やかな風を送ってくれた。不思議な清涼感と静けさが ある絵だった。

何より興味深かったのが人物像だった。一見無表情、無感情に見えるが、誰もが際だった個性を放ち、今にも何か語りかけてくるようなリアリティがあっ た。閉じられた口や、半眼の目は、何より雄弁な語り部だった。そこには無機質で冷ややかな感じを抱く中世絵画とは全く違ったオモシロサがあり、美しさが あって、私はそれぞれの場面を何度も何度も見ては戻り、画家の創り出した壮大な絵物語に引き込まれていったのである。

ピエロ・デッラ・フランチェスカ。ここアレッツオ近郊で生まれ、ルネッサンスを代表する画家の一人であることを知ったのは、後になってガイド本を熟 読した時だった(笑)しかしスタミナ切れでタウン寸前の私に1杯の水を与えてくれたこの絵は、その後も忘れがたく、いつまでも印象に残る絵として記憶に留 められた。

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