不完全なモノとは、時には違和感や不快感をもよおす。しかし、受け手によって不完全な部分が補われる時、そこには完成品をはるかに上回るモノが誕生する。

どうだい?ソレは見えたかい?

振り返ると、まるで人の顔のような修道院が私を見ていた。答えは…そう、イエス。正解も不正解もない答えだけど、私は十分満足だった

最低限のアイテムで、永遠の空間と、限りない表情を導きだす日本の石庭は、しかし、見る者によってその顔を百にも千にも変えていく。

サンガルガーノの修道院を訪れた者も、思い思いに自分だけの十字架を、聖堂を、心の中に浮かび上がらせているはずだ。

だからみんな、足に根が付いたように立ち止まる
見つめていれば何かが出現するかのように凝視する

水平に切り取られた影は屋根が無いことを示す。

12世紀末に建て始められたシトー派の修道院は、建築途中のまま16世紀頃から崩壊。その中でゴシック様式の屋根は消滅し、後は大地に根付くようにそのまま廃墟と化してしまった。

しっかりとした外観が残っているのに、天井が無いこの不思議!頭上にのどかに広がる青空を眺めていると、天空に浮かぶ聖堂のように思えてくる。


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