間もなく兄ちゃんがトラックに乗ってやってきて、バッテリーコードをつなぐべく、私たちの車のボンネットを開けて用意をしようとしたのだが…
ソコで彼が難しい顔をして固まってしまったのだ…
そして、彼が言った言葉に今度は私たちが固まってしまった…

「コレはボクにはわからない…」

「!!!!!」

マイカーのエンジンオイルやバッテリー液など自分で確認する私、コレでもエンジンルームの中がどうなってるかわかってるつもりなのだが、のぞきこんだ我らが友の腹の中は、その全てがでっかいカバーにスッポリ覆われ、なんか巨大な弁当箱が詰まってるって感じで、中が全く見えない状態になっている

※日本でも高級車や外車などはエンジン内部にカバーがかかってるタイプがある…と知ったのは後のこと…庶民な私には全く知らない世界であったのだ…

ゲゲっ!な、なんなんだ!コレは?!
初めて見るその形態に私もポカン…と大口を開けて立ちつくす…
「コレは最新式のエンジンだから、ボクの手には負えないよ」
泣きそうな私の顔を見ながら申し訳なさそうに彼がいう…
でもココに止めっぱなしにするワケにはいかないので、もう1人助っ人を呼んでくると、整備工場まで車を押して運んでいく

その3. すぐ近くに整備工場があったこと
=車を押していける距離だった。もしなかったらレッカー呼んだり、もっと大変な事になっていただろう

その4. すぐ近くにグロッセートという大都市があったこと
=レンタカーの支店がある街は限られている。グロッセートまでは「たった」の30分だった

その5. マリオの手配のお陰で、事故後わずか数時間で、また旅を続けられたこと
=実質私たちはオンブにダッコで何もしていないし、イタリアのモロモロの手続きの事を考えると迅速な対応だった

理路整然とこう言われると、オバカな私でも、自分たちが信じられないくらい幸運だったこと、奇跡のごとくついていた事がわかる。どれか1つでも欠けていたら何もかも狂ってきていただろう。

あぁ〜そうだよね〜全くそうだよね〜!!
一瞬にして気分が軽くなっていく
旅の相棒とはイイもんである
楽しみを分かち合い、苦しみを半減させてくれる
ココにも1人救世主がいたのである
 

さぁ〜ココからが大変である!レンタカー会社に電話してこれからの対応を仰がなければならないのだが、そんな高度な会話が私たちにできるとは思えない。そこで涙目で彼に懇願!お願い!代わりに電話して!!

「わかった。なんとかしよう!レンタカーの書類を出して!」というと、工場の事務所であちこち電話して、全てを丸く納めてくれたのである(この整備工場は彼の父親のモノだった)

「後でレンタカー会社が引き取りにきてくれるから、車はココに置いておいてイイ。君たちは迎えに来るタクシーでグロッセートの支店まで行って代車に乗り換えればイイよ」
あぁ〜〜〜ありがとう!!!!!!!!!

ホントにホントにありがとう!!


言葉ではとうてい言い尽くせない感謝の念を、こんなことで現したくはなかったんだけど、帰り際、いくばかのお金を差し出すと、彼は、とんでもない!とばかりに手を振り、ソレを受け取ろうとはしなかった。お金を出した私たちの方が恥ずかしくなるくらい、キッパリとした断り方だった。

車に乗り込んで運んで行くとき、自分のツナギが汚れているから…と、運転席にビニールシートを敷いて乗り込んだ彼、マリオは、この日間違いなくイタリア中で一番の紳士であり、私たちの救世主であった…

ありがたくって涙が出そうだった別れの抱擁を済ます
「車止まっちゃった事件」そして「救世主マリオ伝説」とともに、この小さな町パンコレの名前を(初めに笑ったことさえ)私は一生忘れないであろう…

トランクにめったらやったら放り投げていた荷物を、タクシーにのせるべくひとまとめにするのは大仕事であったが(やっぱり整理整頓しとかなきゃ!)どうにか詰め込むと、来た道をタクシーで逆戻り。グロッセートへ向かう

海が見えるよ〜♪なんてはしゃいで走った道を、荒い運転でガタゴト揺れながら戻っていくと、これからの旅が、お先真っ暗!みたくなってきて、一気に氷点下まで気分が冷え込んでしまった私…

そんなシュン太郎の私を新たに救ってくれたのが相棒Kちゃんである。私のお株を奪うポジティブシンキングと冷静かつ緻密な頭脳で私たちがどれだけラッキーだったかさとし始めたのだ

私たちを救ってくれた幸運の鍵

その1. 車が止まったのがデカイ3車線の幹線道路でなく交通量が少ない道の、そして町の中だったこと
=ったく、おっしゃる通り!!

その2.
 事故が起きたのが午前中だったこと
=この日は土曜日で、これが夕方だったら工場も閉まっていて私たちは路頭に迷っていただろう…

テキパキと電話するこの時の彼のカッコよかったことといったら!!
実際なかなかハンサムだったんだけど、記憶の中で若干美化されすぎ…かも(笑)→

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